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2006/03/13

外断熱が良いと聞きますが、どう違うんでしょうか?

☆ご質問010☆

外断熱工法が良いと、ある住宅メーカーの人に薦められましたが、今までの工法と何が違うんでしょうか?木造の住宅でも大きな違いがあるのですか?

☆回答はこちら↓

外断熱工法か内断熱工法かについて

 最近大手ハウスメーカーなども広告宣伝するようになり、広く認知されるようになってきたいわゆる外断熱工法ですが、鉄筋コンクリート建築の場合と木造住宅の場合では考え方がかなり異なります。鉄筋コンクリート建築の場合はコンクリートの外壁の屋内側に断熱層を設けることを内断熱工法と言い、それに対してコンクリート外壁の屋外側に断熱層を設ける工法を外断熱工法と言いますが、一般的な在来木造住宅の場合は一般的には外壁の内側ではなく柱などの構造部材間に断熱材を充填する形で施工していますので、これを「壁内充填断熱工法」と言い、柱などの外壁構造部材の屋外側に断熱材を設ける工法は「外張り断熱構法」と呼んでいます(ちなみに住宅金融公庫の工事用仕様書にも木造の場合は内断熱工法または外断熱工法という呼び方はありません)。

 なぜ呼び方が異なるかというと、木造の場合はコンクリートや金属と比較して木材自体の熱容量が小さく、また熱伝導率が低いためで(木材自体に断熱性能がある)、断熱材の位置が異なってもあまり室内面の温度の変動は無く、また適切な通気措置が行われれば結露の問題は発生しません。そのため、断熱性能を重視する北米や北欧では「外張り断熱構法」だけでは要求される高い断熱性能を確保できないことから「壁内充填断熱工法」がほとんどの木造住宅の工事では採用されています。

 鉄筋コンクリート構造や鉄骨構造の住宅では外断熱構法は理想的な断熱構法といえます。マントを建物の外に包む方が建物が外気の変動や直射日光の負荷を受けにくいので、熱膨張での伸縮を低減し建物の躯体(骨組み)が長持ちし耐久性向上につながるいうメリットの他に、壁の内部で結露が起きにくく省エネに役立つという長所があります。また、都市環境においては、特に熱容量の大きい鉄筋コンクリートの建物に外断熱を施したり屋上緑化を図ることは、ヒートアイランド現象の緩和に役立ちます。私自身も10年ほど前に岩手県の山間に計画した鉄筋コンクリート造の公立の保養所の設計においては外断熱構法を提案し採用した経験があります。

 ところが、木造住宅の場合は、前述のようにコンクリートや金属と比較して構造体としての木材自身の熱伝導率がはるかに低いため外断熱構法(外張り断熱工法)によるメリットは少ないのが実情です。特に北海道の極寒地域を除けば、日本の気候条件では木造住宅に外断熱を施してもそれほどメリットは多くありません。通常の壁内充填断熱工法(ただし壁内の水蒸気を外に逃がしやすくするため外側に必ず通気層を確保する)でもいわゆる外断熱工法と同等以上の断熱効果を得ることが可能です。むしろ外断熱工法(外張り断熱構法)の場合は、次世代省エネ規準を満足する断熱性能を得るには、高性能グラスウールだと100mm、発泡プラスチック系断熱材だと70mmの厚さの断熱材(地域によって異なる)を柱の外側に取り付けなくてはならないため、その外側に外装材を取り付けるには釘やビスが長くなり、構造的にも不安定で施工も難しくなります。また最近の研究では、外断熱構法を十分な知識を持たずに使った場合、室内への熱放射の問題をおこし夜間でもエアコンを使用するようになったり、木質構造材の耐久性減少の可能性を指摘されたりしています。概して、現在の外断熱ブームは主に発泡プラスチック系の断熱材メーカーが自社の断熱材を販売するために過大に宣伝し、ハウスメーカーなどが他社と差別化して優位性を主張する材料としている感がありますので、よく見極めて判断することが必要です。

 比較的気候温暖な地域では、北米/北欧や北海道のような高い断熱性能を要求しなくても、この地域の省エネ規準に適合した断熱性能を確保すれば、十分快適でかつエネルギー消費を抑えた生活が可能です。外張り断熱構法だけでも壁内充填断熱工法だけでもそのどちらを採用しても断熱性能に関しては問題ないでしょう。むしろ選択の判断材料としては気密性の確保や施工の容易さ、断熱材の種類の選択、建材の販売方法や価格、そしてエアサイクルなどの自然エネルギー活用工法との組み合わせで決めて宜しいかと思います。
 外部との断熱に関しては外壁だけではなく、屋根面、建物基礎、そして開口部(外部窓)などの断熱性能も併せて考えることが重要です。断熱サッシの採用やペアガラスの採用も大きな効果があります。

建築設計のご相談はPDS(パシフィック・デザイン・システムズ 一級建築士事務所)へ
http://www.pdsi.co.jp

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