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2006/02/23

建築物の安全確保のための制度づくり

 建築物の安全確保のための制度づくりには、英国およびアメリカにおいて先例となる制度を、建築行政のみならずそれを含めた社会的制度を視野に入れて調査研究し、特に以下3項目は積極的に導入すべきでしょう。

1.建築確認制度に関しては、より広範な建築保証制度と一体的な枠組みの中で整備を図るべきと考えます。

 建築確認検査の民間開放に関しては、平成10年の建築基準法改正にあたり、主に英国の建築規制制度における建築許可事務の民間解放を先例として導入を図ったと言われていますが、英国の建築許可制度(建築確認制度は日本独自の制度で建築許可制度とは異なります)は建築保証制度と表裏一体的な関係の中で運営されていることにより民間開放が可能になったものです。実際、建築許可の対象となる住宅の98%が保証制度に加入しており、金融機関の住宅に対する融資も保証制度に加入していることが条件となっていることからほぼ強制に近い位置付けです。日本における今回の事件のように、国が不備な確認制度の責任を負って税金で保証すること自体、契約自由の原則に反した行為で、住宅取得者のリスク軽減と住宅供給者側の瑕疵担保責任の実行は、金融機関も含めた住宅の供給者と住宅取得者が加入する保証制度(保険制度)の充実を図ることにより実現すべきでしょう。そして、建築確認制度は建築保証制度と相互補完的に一体的な枠組みの中で整備が図られるべきと考えます。

2.建物の建設と取得における金融機関の融資において、資産としての質の評価が行われるモーゲージの考え方の導入を義務付けるべきと考えます。

 根本的な問題点は、土地と建物からなる不動産に対する評価方法の違いと、不動産に対する金融機関の融資に対する考え方の違いにあり、スクラップ・アンド・ビルド型の社会から持続可能な社会への移行を計るためにも、建築を消費財と考える日本の現行の評価方法を改め、欧米で一般的に行われているノンリコースローンなど、不動産に対するモーゲージの考え方を広く導入すべきでしょう。その中で、最低基準である建築基準法を守れば良いとする考え方から、より質の高い長持ちする建物を建てれば、より高い資産評価を得て建物の建設または取得に対する有利な融資を受けられるように制度改革を図るべきであると考えます。良質な建築を生み出すには、最低基準のボーダー上で監視強化を図るだけの確認検査機関の拡大強化や建築士に対する罰則強化を図っていても、根本的な問題解決には結びつかない対処療法に過ぎず、基本的には自由経済における原則から、社会が良質な建築を社会的資産として生み出していくように制度改革を図らなければなりません。

3.建築士が、独立した立場で職能倫理規定に基づいた仕事ができるように職能法を制定し、資格を持つ者のみが設計事務所の開設者となるようにすべきと考えます。

 建築士の罰則強化と建築士事務所の業務の適正化も根本的な問題の改善にはつながらないので、その実効性はほとんど期待できないと思います。そもそもGHQの統治下でありながら、便法的な制度として建築確認制度を作り上げ、また世界に例のない建築士制度を戦後の便宜的な制度として制定し、その後、検討箇所に関して見直しをする事無く50年以上も使い続けていることにも問題があります。建築家の仕事は今回の事件からも明らかなように、多額の金銭のみならず人の生命にもかかわるきわめて大きな責任ある仕事であり、高い職能倫理が求められる仕事です。その倫理規定に基づいて仕事をするためには、下請け的立場で指示命令されて仕事をしていてはその責任を果たすことは不可能で、独立した立場を保てなくてはなりません。日本の戦後の建築士制度の見本としたアメリカの建築家制度では、建築家に対する職能法が制定され、建築家が独立した立場で職能倫理規定に基づいた仕事ができるように、医師や弁護士や会計士などと同様に、資格を持つ者のみが設計事務所の開設者となれることを原則としています。ところが戦後、大量に必要とした広い範疇での建築技術者を包含した資格法として制定された日本の建築士法ではこの大原則が欠落し、建築士を雇用して管理建築士として登録すれば、実質的にだれでも設計事務所を開設して業務が行えるようになっています。例えて言うならば、製薬会社が医師を雇用し、その売薬の普及販売のために病院を経営し、患者に対して無料で診察し処方箋を発行することが可能となっているのが日本の建築業界です。これでは患者の立場に立った医療行為が出来ないのと同様、建て主もしくは住宅の取得者の立場に立った設計行為は保証されません。中国は近年、その建築家資格制度の整備に当たって、各国の制度を検討した結果、アメリカの建築家制度を導入したと聞きますが、日本もその本質を欠落した建築士法を改め、社会的制度としてのチェック・アンド・バランスが機能する資格制度と建築業法を早急に整備すべきです。
(米澤正己)

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