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2006/01/14

AIAアメリカ建築家協会のCPD制度の概要

AIA/CES(アメリカ建築家協会における継続教育システムについて)
日本建築家協会・関東甲信越支部/CPD委員会報告文 2002年8月

■用語解説
AIA/CES(American Institute of Architects / Continuing Education System)
PDP(Professional Development Program)NCARBにおける専門職能啓発プログラム
CPD(Continuing Professional Development)英国における継続職能啓発に対する用語

■目的→建築家資格の目的に合致
アメリカにおいては消費者保護(建築の瑕疵から消費者を守る)及び消費者の建築サービスに対する要望により的確に答えるという観点から、建築家はそのキャリアを通じて専門的知識、技能を維持向上するために継続的な職能研修を自らに課し、それを記録し証明する事が消費者及び行政の側から求められるようになってきたことが背景にある(社会的要請)。各州政府における建築家資格の更新の条件となるなど強制力がある(建築家資格は全ての州で1~2年毎の更新性)。

■資格制度を形成している段階
第1段階:学校教育制度(NAABから認定された建築教育プログラムを修了している事)
第2段階:実務訓練制度(大部分の州が建築教育終了後3年間の実務訓練を義務化:IDP)
第3段階:試験・認定・登録制度(全米及びカナダ共通試験:ARE)平均2年半を要している
第4段階:専門職能に関する能力維持のための継続教育制度(義務化が進行中:AIA/CES)

■経緯(歴史)
1992年 AIA年度総会で継続教育システムの導入を決定
1993年 パイロットスタディを開始、オクラホマ大学継続教育カレッジと契約
1995年 会員に継続教育活動の記録をとることを義務化
1997年 建築家登録試験(ARE)の完全コンピューター化
1998年 毎年36単位修得の義務化
2000年 履修の質レベルに関する重み付け等級の廃止と毎年18単位への変更

■義務化の進行→日本は努力義務、アメリカは強制的義務化が進行中
義務化されるのは特にHSWの分野に関して(H(健康)、S(安全)、W(福祉))。
1978年(アイオワ州)、1994年(アラバマ州)、1995年(フロリダ州)、1996年(カンサス州)、1997年(アーカンサス州他2州)、1998年(ケンタッキー州他3州)、1999年(ミネソタ州他3州)、2002年5月現在(22州で義務化、13州で法制化中、9州が検討中)。

■AIAの役割→会員に対するサービス
建築家に対する継続教育プログラムの提供は、継続教育を義務化した州では州政府が提供している所もあったが、機会が限られていたり他州に在住の建築家にとっては出向いてセミナーを受けることが負担になったり、また複数の州に登録している建築家にとっては各州の継続教育を個別に受けることの不合理さから、AIAなどが会員サービスとして提供している継続教育プログラムを各州政府の継続教育単位として認定するようになった。
ちなみにAIAはアメリカにおける最も有力な建築家職能団体であり、各州政府の資格検定委員会にも会員が参加し、また試験制度の運営と実施、試験問題の作成、答案の採点などにかかわっているNCARBとも業務上深い繋がりを持っている。(1857年創立、会員数約80,000人)

■継続教育の機会としては
AIA年度大会への参加(21のワークショップ、175のセミナー、40以上のツアー/2000年度)。
AIAやCSIの各支部で行われる継続教育プログラムへの参加。
AIAの機関紙であるArchitectural Recordの指定記事を読んで報告する。
プロバイダーとして登録している事務所であれば社内学習会に参加する。
登録プロバイダーの提供するセミナー等へ参加する。
講師として講演する。
建築ツアーに参加する。
建築実務に関する自主的な調査研究を報告する。
PIA主催の会議などに出席する。
eClassroomと呼ばれるAIAのWebsiteから参加できる通信教育システムに参加する。
(最近はStreaming技術を使って、オン・デマンドで講義を聴講できる/添付資料参照)
NCARB発行のモノグラフと呼ばれる継続教育用教材を勉強する。

■継続教育プログラムの内容とHSWの定義(NCARBによるもの)
「健康(H)と安全(S)」の主題とは、人工環境及び自然環境の中で、病気、危険、損害、傷害の物理的及び心理的危険から、顧客及び一般の人々を直接的に保護する建築業務に関すること。

(1)「健康と安全」分野
a. 安全環境-事故防止、防犯、建築物安全、非常時システム
b. 設備システム統合-空調設備統合、動力、照明、構造システム障害
c. 複合被害軽減-ハリケーンと竜巻、地震と洪水
d. 設計効果-敷地計画、特殊気象
e. 偶発的エンジニアリング-単純構造設計
f. 建築瑕疵の事例研究-設計瑕疵、構造瑕疵、施工瑕疵
「福祉(W)」の主題とは、人工環境及び自然環境の中で、顧客及び一般の人々の社会的、経済的及び精神的安寧を直接的に高揚する建築業務に関すること。

(2)「公共の福祉」分野
a. 持続可能な建築-経済的実現性、ライフサイクルコスト、緑化設計、環境影響
b. コミュニティサービス-住民同意建築物、公益団体サービス、市民責任
c. 建築家のためのコミュニティ計画-都市計画・設計、地域計画・設計
d. 施設性能基準-照明基準、音響基準、アクセス基準、安全基準
e. 社会的運営基準-取得容易住宅、高齢者居住設計指針、女性避難所設計指針、刑務所設計指針
f. プログラミング-計画範囲、計画予算、施設需要、計画スケジュール
g. 事前設計サービス-財政的可能性、市場分析、規制的確性
h. 保存と再生-適応型再利用、歴史的重要性、伝統的建築材料、確実な復元

(3)「選択性テーマ分野」
a. プロジェクト発注方法-設計/入札/施工、デザインビルド、CM、国際業務
b. 設計チーム調整-施工管理、プロジェクト予定策定、コンサル任務
c. ビジネスとしての建築-意思伝達技術、実務経営、時間管理、財務管理、危機管理
d. バーチャルオフィス-サイバー業務、電子技術、高生産性

■自己企画学習(自己申告)の扱い
自己企画学習は「人々の健康、安全、福祉(HSW)」の履修単位としては認定されない。多くの州では年間12単位の取得を求めているがそのうち8単位をHSWの分野から取得することを求めている。そのため自己申告だけでは残り三分の二の単位は取得できないことになる。

■単位認定に対する客観性の確保→第三者性の導入
プログラムの提供者であるプロバイダーに対してはAIA/CESの詳細なマニュアルが提供され、プログラム内容に関して適宜審査がある。参加者の取得単位は各プロバイダーから直接オクラホマ大学の継続教育カレッジ内にあるセンターに登録され、そこですべて一括管理される。自主認定に関しては、HSWの単位として認められていない。

■プロバイダー
2000年5月現在で約1,800の登録がある。AIA Chapters/Components(AIA各支部その他)、AIA Architecture Firms(AIA会員事務所、400社、$150)、Affiliates(協力団体、300団体、$500?)、Passport/Allied(一般/全国・国際規模、172団体、$2,600)、Basic External Providers(一般/地域限定型、420団体、$850)、Professional Organization(各種職能団体/政府機関、$500)、Educational(大学/教育機関、$500)。
登録プロバイダーの年度大会、CES Marketplace、優良プログラムの表彰制度など。

■プログラム運営費用、単位取得費用
プロバイダーの登録費、プログラム参加費、自主申請登録費用等。

■情報の扱い→単位の取得状況は本人以外には原則非公開。
但し本人の希望により本人が資格を登録している各州政府の建築家登録委員会へ第三者(オクラホマ大学継続教育センター)から直接送られる。

■情報の公開→建築家資格を保持している事が継続教育を受けていることの証。
ホームページの活用によりオンラインで確認が可能。

■記録の入力方法→大会毎の磁気カード、バーコードカード

 継続教育の目的は、建築界における時流に遅れることなく新しい知識や技術を習得し、将来に対する見通しを立て、社会が建築家という職能人に付託する役割に対して責任を担保することであるが、登録建築家にとってはAIAの会員になることで割安な料金で、必用な継続教育を効率的に受けることが出来るというのが会員資格の大きなメリットとなり入会者の増加に結び付いている。またAIAにとっても会員の資質向上に寄与できるのみならず、多くのプロバイダーの参加を得て、業界で中心的役割と責任を果たすことができるようになったことなども上げられる。

■他の諸団体の場合
NSPEの場合
CSIの場合
AICPの場合
ASLAの場合

■JIA/CPDとAIA/CESの主な相違点
1.建築家資格と直接の関連性がない。
2.第三者性の確保が不十分。
3.プロバイダーの組織化が不十分。
4.提供プログラムの内容(消費者保護の視点、HSWの導入など)。
5.年間取得義務単位数(JIA/CPDは36単位、AIA/CESは18単位、各州政府は12単位)
5.取得単位の活用方法が定まらない。
6.インターネットの活用。

日本建築家協会・関東甲信越支部/CPD委員会報告文
020826 会員:米澤正己

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